今日のリスク対応は、これまでになく難しい課題となっています。企業は、レピュテーションや環境問題、新たな法規制のコンプライアンス、揺れ動く国際社会情勢など、さまざまな視点からリスクと向き合わなければなりません。

不確実性が高まる中で歩みを止めないために、まずCxOおよび経営幹部クラスの意識改革が必要です。リスクを単なる危機とは捉えず、「価値創造」の推進力であり、アセットであると認識を改めることが求められます。企業がリスクを把握して正しく対策することは、企業価値の向上につながるのです。

急速に変化するビジネス環境の中で、経営層が組織の内外のリスクをどのように軽減しようとしているのかを探るため、KPMGインターナショナルは2024年2月から3月にかけて、世界中の400人の経営層を対象にグローバル調査を実施しました。

1. CxOおよび経営幹部はリスクマネジメントのけん引役に

リスクマネジメントは、CxOをはじめとした経営層全体の課題です。最高リスク責任者(CRO)は、リスク情報を事業部門にも積極的に提供、リスクオーナーシップをビジネス全体に広げる必要があります。

・61%の経営層は、次の3~5年間に自らが責任を持つリスクの範囲や影響がこれまで以上に大きくなると予測しています。

2.リスクをビジネス全体のバリュークリエイターに

リスクマネジメント機能に基づく重要な意思決定の際は、一貫して「次のアクションや施策は、ビジネスにどんな価値を持たすのか」という視点から行うべきです。それにより、リスク管理部門は「否定することが仕事」というネガティブイメージから脱却し、価値を生み出し続ける存在になれるはずです。

・最高経営責任者(CEO)と最高執行責任者(COO)の66%、最高リスク責任者(CRO)とリスクマネージャーの57%が、部門横断するタスクフォースの設置、部門間の協力関係、コミュニケーションの必要性を挙げています。

3.ビジネスの意思決定へのリスクマネジメントの統合・連携

特定の拠点や部門における決定であっても、他の拠点や部門、又は全社に影響を及ぼすことがあり、これはリスクに関しても当てはまります。リスクマネジメントを組織全体の意思決定プロセスにこれまで以上に効果的に組み込む必要があり、「リスクマネジメントのためのERP」のような共通のデータ設計やシステムを持つことが望ましいです。

・CxOおよび経営幹部の65%、最高リスク責任者(CRO)とリスクマネージャーの71%が、情報システム、部門、作業プロセスを統合することで、リスクに関連する意思決定の効果が大幅に向上する可能性があると述べています。

4.デジタル化の加速とデータアナリティクスの活用

技術革新のペースが加速し、新たなリスクが生まれたとはいえ、リスク管理担当者はより効果的に変化に対応できるようになりました。リスク管理担当者は、組織全体で使用でき統合プラットフォームを構築すべきです。このプラットフォームでは、さまざまなリスクマネジメントに関する技術を1つのフレームワークに統合し、共通のデータを使用します。

・経営層の98%が、デジタル化の加速によって自社のリスクマネジメントのアプローチが改善されたと回答しており、特にリスクの識別、モニタリング、軽減で顕著な効果が見られています。

5.リスクマネジメントに精通した人材の育成

AIや生成AIなどの革新的なテクノロジーはへの投資は、それらを効果的に活用できるスキルを持つ人材の育成と両輪で行われるべきです。それを実現させるには、それらテクノロジーのインパクトを評価し、従業員のスキル向上に取り組み、組織としての価値を最大限に発揮できる体制に向けたオペレーティングモデルの見直しが必要です。

・経営幹部にとっての最優先事項(45%)がサイバーセキュリティ対策の最適化である一方、最高リスク責任者(CRO)とリスクマネージャーにとっては、ITリスクマネジメント戦略の強化(36%)とデータ分析・予測モデリングの統合が2大優先事項となっています。

リスクマネジメントの変革に向けた5つのステップ

 

リスクビジョンの確立 より高いリスク意識を持つ文化を醸成するため、CxOおよび経営幹部と主要ステークホルダーを集めたワークショップを開催するという方法があります。目指すのは、リスクマネジメントを中核的な戦略へ統合することです。
全社的リスクマネジメント戦略の策定 リスク戦略は、組織の戦略目標と直接連携させる必要があります。そこで、主要なリスク領域を明確にし、ビジネスプロセスにリスクマネジメントを統合します。
コミュニケーション計画の策定 変革するリスクマネジメントの目的を明確にし、経営層全体と組織全体の支持を得ることを目指します。
リスクマネジメントスキルの特定とスキルギャップ解消に向けた計画の策定 リスクマネジメントに必要なスキルを特定したら研修を開始し、場合によっては新たな人材の採用も行います。リスクマネジメントのメンターシッププログラムを導入すれば、研修への関心を喚起し、リスクが日常業務にどのように影響するかを従業員に理解や納得させるために役立ちます。
データ品質の改善計画の策定 データガバナンスや収集、保存、分析を評価・改善することにより、リスクマネジメントデータの正確性や適時性、完全性を向上させることを目指します。

 

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